コニカミノルタ、社員が他部署で副業できる社内副業制度を新設

コニカミノルタは、高度な専門スキルを持つ人材を事業横断で活用する社内副業制度「スキルシェア制度」を2026年7月に正式導入しました。社員が所属部署に籍を置いたまま、自らの意思で他部門の短期的な業務に参画できる仕組みです。 お役立ち情報

コニカミノルタは、高度な専門スキルを持つ人材を事業横断で活用する社内副業制度「スキルシェア制度」を2026年7月に正式導入しました。社員が所属部署に籍を置いたまま、自らの意思で他部門の短期的な業務に参画できる仕組みです。
同社はなぜ新制度を導入することにしたのでしょうか?
また、新制度の内容や、新制度の導入により期待される効果はどういうものなのでしょうか?

制度導入の背景

コニカミノルタは2026年7月に「スキルシェア制度(社内副業)」を正式導入し、同年8月24日に発表しました。導入の背景には主に3つの経営課題があります。

  1. 事業ポートフォリオの変革:主力の複合機・オフィス機器事業からヘルスケア、センシング、材料・コンポーネント、画像IoTなど新規領域への事業構造転換が進む中、既存の人員配置の枠組みだけでは新領域に必要な専門性を機動的に確保しづらくなっている。
  2. DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展:データ分析やデジタル技術など、特定分野の専門人材が全社的に不足する一方、そうしたスキルが短期間・スポット的に必要となる場面が増加している。
  3. 社内人財の未活用:社内には専門性や多様な経験を持つ人財が数多く在籍しているにもかかわらず、所属部門の枠を越えて力を発揮する機会が乏しく、能力が「埋もれた」状態になっていた。

こうした課題認識のもと、正式導入に先立って2025年から全社トライアルを実施し、制度の価値とリスク(本業への支障など)を検証したうえで本導入に踏み切っています。

制度の概要

本制度は、従来の会社主導の「兼務」や「プロジェクト配置」とは異なり、社員が自らの意思で参画する点が最大の特徴です。

項目制度の詳細内容
参画方式募集型:各部署が提示するテーマに社員が応募・選考(面接等)を経て採用
指名型:社内スキルをベースに、特定の社員へ直接業務をオファー
業務量と期間1案件あたり月最大20時間、期間は3ヶ月以内の短期・スポット限定
追加報酬勤務状況や成果に応じ、通常の給与とは別に最大月10万円の手当を支給
管理体制本業への影響を防ぐため、所属上長の承認を必須とし、稼働を適切に管理

制度の目的・期待する効果

会社が掲げる目的は大きく2つの両立です。

  • 事業側の成果創出:社内に眠るスキルと各部門の業務ニーズをマッチングさせることで、専門人材不足を補い、事業のスピード向上や外部委託費の抑制につなげる。
  • 社員側のキャリア自律・成長:社員が自らの意思で新しい業務経験を積める機会を提供し、成長機会の拡大とエンゲージメント(会社への愛着・貢献意欲)の向上を図る。

2025年のトライアルでは、この両立を裏付ける結果が確認されています。

  • 依頼部門・実施社員の双方で満足度が高い
  • 業務の成果・品質は期待水準を維持できている
  • 本業への影響は限定的
  • 技術領域に限らず多様なテーマでマッチングが成立
  • 月5時間程度の短時間業務など、新たな需要パターンも確認
  • 事業のスピード向上、外部委託費の抑制といった副次的効果も見られた
会社・事業側のメリット
  • 事業スピードの向上とコスト抑制
    外部の業務委託やコンサル、新規採用に頼る必要がなくなり、社内の専門人財を即座にアサインできるため、開発・事業推進が加速し外注費の削減に繋がります。
  • 組織の縦割り打破
    部門を越えた社員の交流が生まれ、部署間のシナジーや新たなイノベーションの創出が期待できます。
社員側のメリット
  • リスクのないキャリア挑戦と経験獲得
    転職や離職をすることなく、自社にいながら別職種の業務を経験し、自らの市場価値や専門性を高める(リスキリング)ことができます。
  • モチベーションとエンゲージメントの向上
    「自分の強みを活かして他部署に貢献できた」という成功体験や、追加報酬(最大月10万円)が得られることで、働きがいや会社へのエンゲージメントが向上します。

考察

コニカミノルタの「スキルシェア制度」は、国内の人的資本経営において極めて先進的かつ合理的なモデルと言えます。その理由と今後の課題について考察します。

① 「タダ働き」にさせないインセンティブ設計の妙

多くの日本企業が導入している「社内公募」や「社内留学」は、業務が増えるだけで給与は据え置きというケースが少なくありません。本制度が「月最大20時間で最大10万円」という明確な経済的対価を付与した点は、社員のモチベーションを現実的に刺激する極めて実効性の高い設計です。

② トライアルによる実証済みの「心理的ハードル」の低さ

2025年からの全社トライアルでは、技術領域だけでなく幅広い事務・企画テーマでもマッチングが成立し、成果品質も維持されました。「月5時間」といった超短時間ニーズの発掘にも成功しており、本業に支障を出さない範囲(残業時間の枠内でのやりくり等)で無理なく運用できる安心感が、正式導入への強いアピールとなっています。

③ 今後の懸念点とマネジメントの課題

  • 本業部署の不満と不公平感
    「他部署の応援に行く余裕があるなら、自部署の仕事を増やしてほしい」と現属部署の上長や同僚が不満を抱くリスクがあります。上長承認制を形骸化させず、本業のパフォーマンスが維持されているかを厳格に見極めるマネジメントスキルが必要です。
  • スキルのミスマッチと評価基準
    短期(最長3ヶ月)であるため、万が一期待した成果が出なかった場合の評価や、契約の早期打ち切り、成果物の品質担保に関するガイドラインの整備を継続的に改善していく必要があります。

短期的には専門人材不足の穴埋めや外部委託費の抑制といった効果が見込めますが、中長期的には「社内労働市場」的な発想を通じて、評価制度・キャリアパス設計・人員配置のあり方全体を見直すきっかけになり得ます。実際にコニカミノルタ自身も、業務テーマの拡充や参加社員の拡大を今後の課題として明示しており、単発の福利厚生的施策ではなく、人的資本経営の一環として継続的に育てていく姿勢がうかがえます。他の日本企業でも同様の「社内副業」制度は徐々に広がりつつあり、報酬水準まで具体的に公表した点も含め、今後の制度設計の一つの参考事例になりそうです。

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